新型コロナで世界中が大変です。また人種差別の問題も色々と起きました。
私は1959年にアメリカの音楽院に留学し、1960年からは芸能界で働くことになり、ブロードウェイショー「スージー・ウォンの世界」でアメリカ各地をまわっていました。
小説「風と共に去りぬ」で有名な南部の都市、ジョージア州のアトランタで公演をしていた時の事です。
オープンして3日目に、この劇場には三階席があり、そこにも大勢の黒人のお客さんがいたことに気が付いて愕然としました。そこは黒人専用の席だったのですが、全体が暗くて全く気が付きませんでした。
シーンによっては舞台後方の少し高くなった場所での芝居もあるため、三階席からは観ることが出来ません。
その日の公演終了後に出演者全員が集まり色々話し合った結果、可能な限り芝居をする位置を前方に移動することに決めました。
本来、私たち俳優は俳優組合に所属していて勝手にセリフや位置を変えることは、絶対に許される事ではありませんでしたが、それでも私たちの熱意に負けて舞台監督も許してくれました。
カーテンコールの時もできるだけ前方に立ち、精一杯三階席に向かって挨拶することを続け、無事アトランタでの講演を終えました。
1863年リーンカーンによって奴隷解放宣言がなされて奴隷制度は無くなりましたが、差別は依然として続いているのです。
私は、アメリカで暮らした6年で、数々のアメリカンホスピタリティを受けてきました。だからアメリカは大好きです。
でも、この国が抱えている大きな悩みはいかんともし難い悲しい現実です。
私に言えることは、全ての人々に思いやりの心を持ちましょうという言葉だけです。
ロミ・山田