先日遠藤周作氏の未発表の小説が発見され大きな話題になりました。
「影に対して」という氏のお母さまをめぐる壮絶なお話です。
氏のお母さま遠藤郁さんはヴァイオリニストで、私が通っていた宝塚小林(おばやし)の聖心女子学で、一時期音楽の先生をなさっていました。
いつも着物姿で袖を押さえながらタクトをお振りになる姿は、実に個性的でなお且つ大変お怖い先生でした。
授業中、先生がタクトで生徒を指して「そこのかたー!」と大きな声が飛んでくると、生徒の誰かが先生の豹変にこらえ笑いが止まらず、その時の肩の震えがみんなの肩に伝染して周り中に広がってしまい、箸が転んでも可笑しい年頃だった私たちは、毎回笑いをこらえるのに地獄の苦しみでした。
その時代に郁先生はつらいつらい毎日を送っていらっしゃったことや、遠藤周作氏のお母さまへの壮絶な思いをこの著書で知り、私は涙が止まりませんでした。
ぜひご一読をお勧めします。